信州おやき旅──善光寺編
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作成日時 : 2007/10/17 20:46
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この3〜4年、「米ぢから」という言い方で、米料理や米菓子の再発見について書いている。でも、不思議なことに“米もの”にはまればはまるほど、“小麦もの”のうどんやほうとうにも興味が深まっていく。米を陽とするなら、小麦は陰の関係で、どちらか一方だけに肩入れしても日本の食はわからないのだ。
歴史的にいうと、この国は米を税金の基準にして以来、あらゆる地面を田んぼとして開発してきた。だが、米の品種改良がすすんだ現代では想像もつかないけど、ふた昔前まではどんなにがんばっても米がつくれない地域があった。季節風のために夏でも気温が上がらなかったり、しじゅう干ばつになったりするところである。でも、そういうところでは小麦がよく育った。たとえば讃岐うどんの香川県や南部小麦がとれる岩手県北部などがそうだ。
↑おぶっこは信州版のほうとう
信州も同じで、山襞が細かいせいもあって、米に適さない土地が多い。そのため人々は小麦を育て、独自の“粉もの”メニューを生み出した。代表がおやき。小麦粉の皮にかぼちゃ、野沢菜、しいたけなどの具を詰めて丸め、囲炉裏で焼いた焼きまんじゅうである。
昔こんな話があった。長野県人会の集まりでは「好物がおやき」とは口が裂けても言ってはいけないという。お里が知れるからだ。その理由は──おやきは米がとれない山間部の郷土食だから、僻地育ちを告白することになるというのだ。
でも最近はさま変わりした。おやきは具に野沢菜、かぼちゃなどの食物繊維やビタミン豊富な野菜をどさっと入れるから、ヘルシーそのものだとして好感度がアップしたのである。山村育ちと明かそうものなら、その人は称賛の眼差しを浴びるらしい。
↑次回訪ねる小川村の「おやき」の石碑
実態はいかにと、秋の信濃へおやき旅を試みた。善光寺を起点に長野市西部の小川村へ向かい、南下して生坂村へというコース。
↑東側信濃美術館側から入った善光寺境内
まずはおやきに引かれて善光寺参り。参道には団塊世代を当てにした還暦記念のお参りをすすめる張り紙がぺたぺた貼ってあるが、お寺の商魂に負けていないのが土産物屋のおやき。「門前おやき」とか「元祖おやき」という大看板を見ると、つい足が止まってしまう。 山門前を曲がり、和菓子屋「喜世栄」へ。ここは長野市民御用達の人気店で、最中やまんじゅうのケースとは別におやき専用の棚があり、ざっと8種のおやきが並んでいる。1個150 円前後。長野県のおやきの平均価格である。
現代おやきなので、どちらかというと蒸しまんじゅう風。囲炉裏の暮らしから縁遠くなるにつれ、この手がポピュラーになってきたのだ。
そら豆あん、きのこ、かぼちゃの3種を試食してみたら、むっちりつるりと二段構えの食感が楽しい。具はすべてていねいに下ごしらえしてあり、とくに皮ごと荒刻みにしたかぼちゃの煮物は醤油が実によく効いていて、小麦の皮といい相性だった。(続く)
信濃路の秋を丸めしおやきかな
千恵子
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